長期金利1%上昇で23兆円の国債評価損が出る日銀総資産は500兆円、国債保有額427兆円

東京新聞によれば、5月末時点の日銀総資産は500.8兆円、国債の保有額は427.2兆円に上ると日銀が発表したらしい(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017060202000252.html)。

地味な扱いなので見過ごしそうだが、豪いこっちゃ、昨年の日本の名目GDP(国内総生産)536兆円とほぼ同規模となったのだから。他国から「日銀が財政ファイナンス」をしていると内政干渉されたとしても、反論するには難しい規模なのではあるまいか。

安倍首相のアベノミクスの掛け声の下、日銀はインフレ率2%を目指しはしたが安倍自慢のデフレ脱却も儘ならず、今後も資産を急速に膨らませ続けるしか打つ手が(出口戦略以外)無くなってきたのかもしれない?


◆日銀の赤字リスクに河野自民党行政改革推進本部長が咬みつく?

安倍政権に取り込まれる際、自身のブログを閉鎖して恭順の意を示したかに見えた河野太郎氏だったが、「日銀は誠実な説明をしてこなかった」と跳ねっ返り出した感がある。

東京新聞によると(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201706/CK2017060602000130.html)、

自民党行政改革推進本部の河野太郎本部長はインタビューで、日銀が大規模金融緩和を終える「出口戦略」を行った場合、「日銀が赤字に陥り、国民負担が生じる可能性がある」との考えを示した。更に将来のリスクに触れない日銀の態度に「(税金の無駄遣いを調べる)行革本部として知らぬ顔はできない。日銀は説明すべきだ」

と苦言を呈したとか。安倍君を忖度した金融政策を行う日銀に対して、与党内から厳しい意見が出るのは異例のようだ。


◆長期金利が1%上昇した場合の日銀保有長期国債の評価損は23兆円に達すると黒田総裁が発言

5月10日の衆院財務金融委員会で黒田東彦日銀総裁が、これまでの様な「時期尚早」とのコメントを繰り返さずに長期国債の評価損に言及せざるを得なかったのは、既にブルームバーグ・インテリジェンスが長期金利1%上昇時の損失は約26兆円と試算しており、日銀推計の損失額より1割強も多かったからではないのか。

出口戦略では様々な問題が生ずるであろうことを、もはや隠し通せないと。

・そもそも日銀や財務省が望むような緩やかなインフレ率となるのか
・インフレ率上昇に伴う長期金利上昇に名目GDPの成長が追随できるのか
・日本国債のリスクプレミアム上昇に伴う長期金利上昇となる懸念
・日銀の借金が資産を上回る「債務超過」に転落する懸念
・ハイパーインフレによる経済恐慌の懸念


◆追記、3か月ほど前にブルームバーグが伝えた「日銀の赤字10兆円、金融緩和出口で試算-通貨の信認低下か影響なしか」によれば(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMS5YD6K50ZF01)、

日銀が目標とする物価上昇率2%が実現した場合、量的質的金融緩和の出口戦略で年最大約10兆円の赤字が発生する、という試算を日銀OBの大学教授らが明らかにしたらしい。

黒田さんを始めとするリフレ派の最大のインチキは、半永久的に長期金利が低空飛行を続ける=ほぼ0.0%に張付く=政府と日銀がコントロール可能である、という暗黙のマヤカシ論を展開していることだ。

現実は、日銀が毎年80兆円ほどの国債買い入れをしているからこそ、長期金利が低く抑え込まれている(=国債価格が高止まり)に過ぎない。出口戦略を行うことは、国債の買い入れ終了と国債の売り出し=バランスシートを縮小する事だ。

・金利が1%上昇しただけで、国債の評価損23兆円
・350兆円を超える日銀当座預金に対する付利金利引き上げ=利払い負担急増
・国債を誰も買わなくなれば国債価格は下落、最悪の場合暴落=紙屑となる
・国家予算を計上するため毎年50兆円ほどの赤字国債が積み上がる

これは取りも直さず通貨の信認低下、或いは日本円の毀損を引き起こすので、ハイパーインフレの引き金となりうる。

この記事について

このページは、烏柄杓が2017年6月 7日 12:56に書いた記事です。

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