事の起こりは2014年12月、ドイツのハッカーが「記者会見で撮影された国防相の親指の写真を基に指紋の再現に成功した」とネット上で発表。
真偽のほどは不明だが、ネット上の画像から指紋が読み取られる可能性があるとして、注目を浴びるとともに一時騒然となった。
日本でもその危険性が知られるようになった切っ掛けは、国立情報学研究所の越前功教授(情報セキュリティー)らが開発した指紋の盗撮防止技術の発表で、それによると「顔と手を一緒に撮影した写真から個人と指紋を特定される恐れがある」というもの。
◆SNSなどへの写真アップの危険性、特に自撮りは禁物?
越前教授によると、デジタルカメラは解像度が数千万画素と高性能で、こうした市販の撮影機材とコンピューターソフトを使えば、写真から指紋を精密に再現できると言う。
実験では5メートル離れた場所から撮影した画像をコンピューターに取り込み、指先を拡大して指紋の凹凸を立体的に再現。その情報を使うと、指紋認証で「本人」と認証されたらしい。
本人特定や個人認証に広く使われ始めた指紋情報が、ネット上にアップされた画像から読み取られてしまう危険性は、今後増大することはあれ減少することは無いと思われる。
例えば、ツーショットや仲間とのグループ写真、知らぬ間に自分が写り込んでしまった写真など、意図しない画像がアップされて指紋が読み取られてしまうなんてことも。
特にアップの撮影が多い自撮りは、スマホが高性能なためより鮮明に写るので、危険性はより高まるのではないか。
◆悪用の危険性は指紋に限らず、虹彩や顔を使った生体認証にも
指紋による個人認証システムは、IDやパスワードを使用せずに指一本で本人と確認できるのが利点で、スマホやパソコンのログインは言うに及ばず、オフィスへの入退室、金融機関(ATM)の利用、玄関のドアロック解除など利用が拡大している。
それだけに第三者に指紋の情報を読み取られた場合、プライバシーの侵害や金銭的な被害を受けるなど悪用される恐れがあり、情報技術が進展する今後は一層の注意が必要となる。
越前教授は「今年はスマホへの指紋センサー搭載率が世界で5割を超えると予測されるなど、指紋認証は更に普及する。一方で、こうした情報を盗む方法も進歩しているので、日常生活の中で知らぬ間に悪用されていたという可能性も高まる」と警告している。
指紋以外にも目の虹彩や顔など、近年の生体認証に利用されているあらゆる生態情報を読み取られる(盗み取られる)危険性を同研究所は指摘している。
・基本的に指紋や虹彩は、死ぬまで変化しないはずなので、もっとも危惧すべき情報であろう。
◆指紋の盗撮を防げ、技術改良で「ピースサイン」も違和感なく、国立情報学研究所が発表
国立情報学研究所の越前功教授らは3月17日、画像などに写った指から指紋を偽造されるのを防ぐ「バイオメトリックジャマー」技術を改良したと発表。20日からドイツのハノーバーで開催される国際見本市「セビット」で公開したらしい。
越前教授らは、ネットなどにアップした画像から指紋を復元して不正なアクセスがされないように、指の表面をマスクする技術を世界で初めて開発していた。
・ハッカーとクラッカーのイタチごっこに、いつ終止符が打たれるのか。越前功教授らに謝意!