日銀が昨年7月の金融政策決定会合で、ETF(上場投資信託)の買い入れ額を年6兆円に倍増してから半年が過ぎたが、1月31日の日銀会合でも現状維持が決定された。
2016年のETF買い入れ額は4兆円に達し、ニッセイ基礎研究所の試算によると、日銀が市場に流通する浮動株式の1割以上を保有する企業は47社に上るなど、日銀の存在感は高まるばかりだ。
しかし、専門家からは「株価が歪められ、市場の機能を損ないかねない」と弊害を指摘する声も出ている。
日銀は投資家の不安を解消して積極的な投資を促す金融政策の一環として、TOPIX(東証株価指数)などの株価指数に連動したETFを買い入れており、これらの投信を通じて実質的に企業の株式を保有している。
年4兆円の買い入れ額は、2兆~3兆円の「事業会社」や「信託銀行」を上回り、国内最大の投資主体だ。株価への影響力は計り知れない。
日銀は買い入れのタイミングを公表していないが、市場では「午前の取引で株価が下落した際、午後に買い入れることが多い」との見方があり、「日銀が買うとの思惑で買いに動く『コバンザメ』投資家が多い」(市場関係者)。
日銀のETFの購入残高は終わりの見えない金融緩和で、1月20日時点で11兆5410億円に膨らんだ。黒田日銀総裁は昨年12月の記者会見で「物価目標達成に必要な政策」として早期の買い入れ縮小を否定したが、株価下落で巨額の損失を抱える恐れがある。
専門家は「日銀は株価が下落すれば巨額の損失を抱えることになり、国民負担になる。一方で、日銀が売りに転じれば株価が押し下げられる」と緩和縮小の困難さを指摘した。
このような記事を経済紙や専門紙ではなく、一般紙の新聞までが人目に付くよう掲載しだした。日銀の株価操作を危惧し始めた証ではないか。
1月31日の日銀会合では、
・長期国債の買い入れ額については、概ね現状程度の買い入れペース(年間80兆円増)を目途
・ETF、J-REITについて、保有残高がそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買い入れを行う
・CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する
などが決定された。
これらは紛れもなく実体経済を無視した(その内スタグフレーションに突入?)、日銀による官製相場の創出に他ならない。
その竹箆返しは、いつか必ず訪れる。取り返しのつかない致命傷を負うことだけは避けねばならない、のでは?