タワーマンション節税を目論む富裕層に痛手 高層階は増税で低層階は減税 形振り構わぬ政府の税収アップ策?

平成29年度税制改正大綱によると、タワーマンション節税(通称タワマン節税)を抑制するための増減税が、29年1月2日以降に完成した高層マンションに適用され、30年度の固定資産税から実施される見通し。

対象となるタワーマンション(高層マンション)は、高さ60メートルを超え、概ね20階建て以上の新築物件。

アベノミクスの実弾として全盛を誇ったタワマン節税も、そろそろ終焉の足音が近付きつつあるようだ。価格の割に相続税が安くて済むと、タワーマンションを節税目的で購入するよう煽った形跡も有りや無しや。

タワマン節税の仕組み(カラクリ)

前提:
・相続税の実務では、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価するルール。路線価は時価の約80%、固定資産税評価額は時価の40~60%位とされ、現預金や有価証券に比べて評価が低く設定されている。

・土地付き一戸建てに比べ、マンションは時価に占める建物の割合が大きいため、より評価が低くなる。1戸当たりの土地の持ち分が小さいタワーマンションでは更に評価が低くなる傾向にある。(相続税評価額も小さくなる)

注)高層マンションの場合、全戸数(全世帯)で限られた土地(敷地)を所有する為、1戸当たりの土地の持ち分は小さくなる。

・相続税の算定基準となる固定資産税評価額は同じ棟内であれば、日当たりや眺望の善し悪し、方角や階層などの条件によって差が付かず、専有面積に応じて一律となっている。


現場の実感:
・タワーマンションは眺望が良い高層階になるほど人気で取引価格が高く、同じ面積でも低層階の数倍になることも。しかし現在の固定資産税評価額は、1棟全体の評価額を算定した上で各戸の床面積で均等に分割しているので一律。

・国税庁によると、全国の20階以上のマンションの売却物件(過去3年分の確定申告)を調べたところ、評価額の平均は市場価格の3分の1に留まっていた。つまり、評価額の3倍で所有マンションを売却でき、最大では凡そ7倍のケースもあったとか。

・ベタで言えば、現金で相続するよりも高層階のマンションを購入して相続した方が、相続税がより少なくて済むことになる。

・これに拍車を掛けたのが、平成27年1月の税制改正で相続税が増税になったこと。


貧乏人にとっては縁の無い話しだが、アベノミクスの失敗が誰の目にも明らかになった今、政府は指を咥えて「(超)富裕層」を見ている訳にはいかなくなったと言うことかと。

納税者の不公平感に応える形で「固定資産税の見直し」となっているが、富裕層の相続税対策潰しであることは間違いない? これからも折を見て、税率がアップしていくと覚悟していた方が良いのかも。


問題:
・それでも未だ(超)富裕層の税負担能力に比べれば優遇し過ぎで、応分の税負担をしていない。
・市場価格と評価額の極端な乖離をどうするのか。
・新税制は新築物件に限定されるので既築物件の税率は今のまま=歪みのある複雑な税制を生じさせる。


衆議院選挙も折り返しとなったことで、富裕層の反感を厭がったと言うより、投票での竹篦返しを恐れた政府が複雑怪奇な税制に目を瞑ったのかも。

この記事について

このページは、烏柄杓が2016年12月 9日 21:37に書いた記事です。

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